物流2024問題がなにかと話題になっている。5年間の猶予期間を経て、働き方改革関連法で定められた残業時間の制限などでトラックドライバーひとり当たりの労働時間が軽減されたことで、これまで翌日配送を実現していた通販業者も配送の日程に余裕を持ち始めた。
円安や海外の情勢不安、インフレなどで物価が急上昇するなか、賃金の上昇は追いついていない。そのためこれまで小口配送の大部分を占めていたEC(ネット通販)の荷物が減少している。それは回りまわってメーカーの生産や出荷ペースも鈍らせることになる。
宅配大手のヤマト運輸は、月間ベースの売り上げが前年割れとなったことを受けて、競争力を高めるために値下げに踏み切った。この物価上昇局面にあって値下げに踏み切るのは、体力のある大手だからこそできる戦略だ。
値下げによって取扱量を増やすことが狙いだが、ECの荷物量がそれによって増えるわけではないので、運輸業界は荷物の取り合いが激化するだけで、物流業者がますます疲弊する可能性が高い。事実、業界内では「値下げして利益が出るのか」と追従には慎重な見方もある。
仮にヤマト運輸が値下げによって扱い量を増やしても、日本中の荷物のほとんどを扱えるほどの規模ではない。確かにライバルである佐川急便を擁するSGHDは、ヤマトの値下げによって売り上げが減少しており、明らかに影響を受けているが、値下げに追従する姿勢は見せていない。
つまり荷物の扱い量が減っても、単価は維持して効率化によって利益を確保する方針のようだ。大手同士でもこれだけこれは中小の物流業者にとっても、参考になるのではないだろうか。
冒頭のようにトラックドライバーひとりが働ける時間が限られる以上、扱える荷物量には限界がある。したがって売り上げは自然に減少することになるが、そのまま利益を減らしていくのではなく、知恵を絞って利益を生み出す構造に変えていかねば、業績は低迷していくばかりとなってしまう。そのため共同配送(荷主同士が協力)や共同運行(物流業者同士が協力)、利益率の高い荷物への集中が今後のトラック事業者にとって重要な対策となりそうだ。
物流以外の業種や関連した業種にまで事業を拡大することも、荷主に対して弱い立場からの脱却には有効だ。ライバル他社との差別化を図らなければ、ますます価格競争の波に飲み込まれることになる。独自の仕組みづくりを構築することが、生き残るには大事なのだ。
ともかくこれまでと同じ姿勢では、ドライバーの確保や収益を上げることは難しくなる。昨今の物流2024問題(規制強化)によってトドメを刺されて、廃業した物流業者も少なくない。であれば生き残った企業はこれからが生死の分かれ目となるだろう。
これからは業者間の横の繋がり、ネットワーク作りが重要になる。スピードを求める個別配送は料金が上昇し、共同配送によるコスト優先型の配送が主流になる。現在、平均積載率は5割前後と言われているトラック輸送。これを8割、9割に高める共同配送、共同運行の導入が急務だ。