三菱ふそうがEV小型トラック、eキャンターに米国Ample社が開発したバッテリー全自動交換ステーションを組み合わせた実証実験を開始した。これは前回のジャパンモビリティショー2023で三菱ふそうブースが展示していたもので、ロボットによりトラック底部に装着されているリチウムイオンバッテリーを交換するもの。
1回の交換作業に5分を要するらしいが、いくら大型のバッテリーユニットといっても、単純に交換するのに5分もかかるのは時間がかかりすぎでは、と思う方もいるだろう。しかし、モビリティショーでのデモを見ていた方(筆者以外に何人いるだろうか)は分かると思うが、バッテリーパックは左右で2つに分割されており、片側ずつ取り外しては充電するためのラックへと運び、充電済みのバッテリーパックをピックアップしてトラックの底部へと運び、固定して接続されるまでを自動で行うのだ。その動作はけなげさを感じさせるほどだ。
それとバッテリー交換式にすると、充電している間はクルマが動かせないというデメリットが解消されるだけではない。走行後に取り外したバッテリーは急速充電する必要がなく、ゆっくりと時間をかけて普通充電できるのでバッテリーが性能低下することが少なく、バッテリーも長持ちするので新規のバッテリー購入費用やリサイクル費用まで含めれば全体としてのコスト削減にもつながるのだ。
EVトラックを物流で使うメリットは色々あるが、低コストが伴わなければ持続性は叶わない。宅配事業のような行動半径が限られる業務には小規模で開始できるため打って付けの環境だから、実証実験としてだけでなく、数年後には実稼働へと発展する可能性が高い。
今回の実証実験にはヤマト運輸だけでなく、石油元売のENEOSも参画している。何でガソリンスタンドを展開しているENEOSがEVのバッテリー交換ステーションを運営するのか、と疑問に思う方もいるだろう。ENEOSや出光興産のガソリンスタンドは今や化石燃料を販売するだけでなく、様々なエネルギーを提供することでモビリティをトータルでサポートする施設を目指しているのだ。
中国ではNIOという新興EVメーカーがバッテリー交換式のEVを展開しているが、走行中の振動なども影響するのか、道路上にバッテリーを脱落させて(そのまま走行できたのだろうか?)しまった動画などがネット上に上げられている。
これはもちろん、他車と衝突すればクルマが損傷したりコントロールを失って二次被害になるだけでなく、火災などのリスクも発生する。現在のところ日本ではEVの火災は少ないが、中国では毎日のようにEVによる火災が起こっているので、日本での販売台数が増えれば中国製EVの火災事故も起こってくるようになると思われる。
日本と米国の企業連合では、そんな問題など起こるはずはないと思っているが、ある程度時間をかけて実証実験を続けることで耐久性や信頼性のテストを行うことが重要だ。とりあえず導入して、問題が起これば改善するのが中国式であるのに対し、日本や欧州ではしっかりと実証実験を行ない、安全性や信頼性を確保してから実用化や販売を開始するから安心できるのである。