「だれでもトラック」のキャッチコピーとイメージキャラクターに本田翼を起用し、女性でもおしゃれに使いこなせるトラックという印象を与えているいすゞ・エルフミオ。コンパクトなボディと小径ハンドル、ディーゼルATというパッケージは、軽トラックでは物足りないが1.5トンや2トン車は準中型免許が必要で、そんなハードルの高さを払拭する新しい感覚の小型トラックだ。
TVCFは中国のEVメーカー(と言っても実は中国国内ではエンジン車も販売しているが)BYDが長澤まさみを起用したのと同じくらい、インパクトがある。
しかし平ボディで1.3トン積みのシャシーではボディを作れば、さらに積載量は減ってしまう。実際、国際総合物流展2024ではトプレックがエルフミオの冷凍車を展示していたが最大積載量はわずか800kg。これでは「全然運べない!」という声が挙がるのも当然だ。
しかし、見方を変えれば別の強みが見えてくる。軽トラックかエルフミオか、という選択肢しかない初心者トラックドライバー(新普通免許所持)にとって、エルフミオは何とか運転できるトラックの上限なのである。同じような存在として日野デュトロの兄弟車であるトヨタ・ダイナには1トン積みのガソリン車がある。
しかし800kg積みのライトエースと比べてアドバンテージがあるようには感じられず、実際に荷物を積んで坂道の多い地域などを走ると、ガソリン車ならではのトルク不足による加速の悪さを感じさせることもあるようだ。
その点、いすゞのエルフミオはディーゼルエンジンとATを組み合わせ、乗りやすさと力強さを両立している。こうした小型トラックに乗って仕事をしてもらうのではなく、路上教習のための車両だと思えばいいのだ。これらのトラックで運転操作や仕事に慣れれば、準中型トラックに対する抵抗感は薄らいでくるだろう。
運転のセンスがある人なら、トラックに乗ったことがなくても、数日から数週間で小型トラックの運転感覚を掴めるはずだ。FF乗用車とは違う小回り性や内輪差(乗用車とは違う曲がり方)などを習得すれば、その延長線上に準中型トラックはあり、その先には大型トラックやトレーラーが見えてくるのだ。
自信を付ければやる気が出る。準中型や特別講習を通じていきなり大型免許を取得する猛者も現れることだろう。それもエルフミオという小型トラックでトラックドライバーの仕事に触れて、自分が向いているという確信を得なければ、さらに大きなトラックを乗り回す気になれない人も少なくないのだ。
乗用車だって、普通免許を取っていきなりランクルを買って乗り回す人はほぼいない。最初は運転しやすいコンパクトなハッチバックかセダン、軽自動車で運転を練習するはずだ。
普通免許で乗れるトラックは、そうしたトラックの入門編であり、次へのステップアップを誘うツールなのである。半年後には準中型、あるいは中型トラックを運転し、数年後には大型トラックへとステップアップするドライバーを養成できる。
こうした働きかけがトラックドライバーという職種を支えることにつながる。エルフミオは、そんな未来を作る力になり得るトラックなのである。